2010年 09月 23日
サルデーニャ島は一枚の写真絵葉書を構成する上でも絶好の被写体と景観を惜しみなく与えてくれ、また一本のフィルムを制作する上においても作り手のイマジネーションやイスピレーションを留めることなく掻き立てる場所としてよく知られていると思う。 故にサルデーニャは映画のロケ地としてよく利用されている。いや映画ばかりではなく、あらゆる撮影のロケーション地としてとりわけサルデーニャの海がテレビや雑誌に頻繁に登場しているのも事実ではなかろうか。 もともとサルデーニャは60年代初期頃までは羊飼いの生活や追い剥ぎやイタリア製のいわゆるマカロニ・ウエスタン調の西部劇を題材にした映画のロケ地としてよく使われていたが、1964年に制作された2本の映画によってサルデーニャの海岸線沿いの息を呑むような美しさが秘境の地として脚光を浴びだすようになる。 1本目はサルデーニャの南東にあるVillasimius(ヴィラシミウス)のPorto Giunco(ポルト・ジュンコ)がロケ地として使用された"La Calda Vita"(恋のなぎさ)。ベルギー出身のフランス女優Catherine Spaak(キャサリン・スパーク)主演、Florestano Vancini(フロレスターノ・ヴァンチーニ)(1926-2008)監督の作品である。 2本目は同じく1964年に制作された"Deserto Rosso"(赤い砂漠)。Monica Vitti(モニカ・ヴィッティ)主演、Michelangelo Antonioni(ミケランジェロ・アントニオーニ)(1912-2007)監督の初のカラー作品でもあり話題になった作品。尚この作品はベネチア映画祭金獅子賞を受賞している。 映画「赤い砂漠」のロケ地として使われたのはサルデーニャの北東にあるマッダレーナ諸島の一つBudelli島のある海辺である。以前にも書いたと思うが、マッダレーナ諸島のブデッリ島、サンタ・マリーア島、ラツォーリ島の一帯をazzurro "manto della Madonna"と昔から地元の人々からこう表現されている。それはキリスト教絵画の聖母マリアの青色のマントのように濃くとても深い青色をしていることからマドンナブルーと形容されているのである。 さて、そのある海辺とは"Spiaggia Rosa"(バラ色の海辺)として知られており、サンゴ類や浮遊性有孔虫の死骸によって波打ち際がピンク色に見えることでたくさんの人がこのピンク色に輝く海辺に訪れ、海辺の赤砂をペットボトルに入れて持ち去る人が途絶えなくなってしまったことから1994年から立ち入り禁止となり、現在は船上から鑑賞するのみになってしまったが、それでも毎年ブデッリ島に訪れる人は絶えないのである。 そして1970年代になると御馴染みの007シリーズ「私を愛したスパイ」1977年制作のLewis Gilbert(ルイス・ギルバート)監督、Roger Moore(ロジャー・ムーア)主演の作品ではエメラルド海岸のカーラ・ディ・ヴォルペ湾域をある1シーンのロケ地として使用されていた。 実はこのエレファントロックは名前のごとく像の形に見える事からそう呼ばれているのだが、カーラ・ディ・ヴォルペの隠れた名所なのである。 私たちも毎年カーラ・ディヴォルペのマリーナからカヌーでエレファントロックまでたどり着き、エレファントロックの水中を何度素潜りしたかわからない。 そしてカルトムービー的要素の強い1974年に制作されたイタリアはローマ出身の女性映画監督Lina Wertmuller(リナ・ウエルトミュラー)監督の作品"TRAVOLTI DA UN INSOLITO DESTINO NRLL'AZZURRO MARE D'AGOSTO"「流されて」はサルデーニャ島の東のオロセイ湾域が舞台となった。主演はGiancarlo Giannini(ジャンカルロ・ジャンニーニ)とMariangela Melato(マリアンジェラ・メラート)である。 この作品の脚本・監督を務めたLina Wertmullerはサルデーニャ島の東のオロセイ湾の粗削りで手付かずの大自然の醍醐味を感じさせるこの雄大な海岸線沿いにすっかり心を奪われ、またオロセイ湾の真珠とまで表現されるグリーンとコバルトブルーのコントラスが成す海の色と石灰質の荒々しい岩山にジネープロ(ビャクシン)や自生のキョウチクトウ等地中海潅木地帯が広がる景観は、フィルムが織成す虚構の世界と現実とを交差させる上で制作者にとっては理想の舞台となったのだろう。 そしてこのLina Wertmullerが1974年に制作した「流されて」にすっかり感銘を受けたイギリスの映画監督であり、アメリカのポップスター・マドンナの元夫であるGuy Ritchie(ガイ・リッチー)が2002年に「流されて」のリメイク版として「SWEPT AWAY」をマドンナを主演に起用して発表した。 しかしリメイク版「SWEPT AWAY」は2003年のラジー賞のワースト作品賞・監督賞を受賞しており、何かと話題をさらった作品として知られていると思う。 もちろんガイ・リッチーやマドンナもオリジナル版と同じようにオロセイ湾の海岸線沿いをロケ地として2001年に巡回している。 ちょうど先日もテレビでオリジナルの「流されて」が放映されていたが、何度観てもオロセイ湾の海岸線沿いの美しさには感嘆するばかりである。 そしてオロセイ湾の海岸線沿いはトレッキングコースとしても知られており、Cala Gonone (カーラ・ゴノーネ)からCala Luna(カーラ・ルーナ)の6.4kmのコースが特にお薦めだ。片道で2時間、往復で4時間。トレッキングをしながら視界に入ってくるパノラマがもう絶景なのである。 是非時間があれば、オリジナル・リメイク版合せてオロセイ湾の海岸線沿いの景観や海の美しさを意識しながらフィルムを鑑賞していただきたい。 そしてマドンナやガイ・リッチーをはじめとするロケクルーが宿泊した有名なカントリー・リゾートホテルをご存知だろうか。いろいろと雑誌などでも取り上げられているからご存知の方も多いだろうと思うが、実はこのカントリ・・リゾートホテルはエメラルド海岸と縁(ゆかり)のあるホテルだったことはあまり知られていないように思うのだが。 次回はこのホテルについて少しお話したいと思う。 いつも訪問ありがとう。
by portocervo1962
| 2010-09-23 09:03
| Barbagia di Nuoro
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